世界的有名鼠との対決③(最終回)


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大好評をいただいたこのシリーズ、いよいよ本日をもって最終回でございます!

 

(以下、大和優雅2006年4月12日の日記)

世界的有名鼠との対決③(最終回)

 

 

二度目のDL訪問からさらに10年。

その10年の間に、オラは恋女房(まだ未入籍)と出会った。

彼女は執拗にDL訪問を望んだが、オラは決して首を縦に振らなかった。

 

しかし、恋女房の策略か……。

 

先週末、恋女房の兄貴一家が東京に遊びに来た。

 

なんと、その待ち合わせ場所に指定されたのが……DLであった……。

 

「お兄様、言っておきますがオラは絶対に乗り物には乗りませんよ」

「わかったよ。じゃあ俺らが乗るときに、君は息子の面倒を見てくれればいい」

 

オラは、3歳の甥っ子のお守りに徹するという条件で、再びDLに足を踏み入れることとなった。

 

雷雲立ちこめて、豪雨と晴天を繰り返す奇怪な春空……。

もともと「雨男」「雪男」「嵐男」などと呼ばれるオラに、ふさわしい空模様……。

 

そんなことお構いなしに、兄貴家族と恋女房の一行は、恐ろしい乗り物へと向かった。
嗚呼!これは因縁深きスプラッシュ・マウンテンではないか!!!

 

落下してくる先人達を見る度に、オラは死ぬまであんなモノには乗りたくねえなと改めて思った。

しかしオラの腕の中には、黄門様の印籠よろしく、3歳の甥っ子がいる。

彼さえいれば、道楽を通り越した人間的エゴの終末的恐怖快楽の劇物を体験せずに済む!

そういう安心感を持って見ていると、

「人間というやつぁほんとに愚かな生きものだなあ」

なんて、

ネズミに支配されたホモ・サピエンスどもを鼻で笑うことが出来たのだ。

 

ところが……

 

 

兄貴家族の後ろを進む甥っ子とオラのもとに係員が近づいてきた。

 

 

「あのー。お子様には身長制限がございます。こちらで測らせていただきます」

 

オラはその係員の鼻をつまみながら、こう言ってやった。

「ノーサンキューだよバイト君!残念ながらこの子は乗らないのだよ!オラと一緒に並んでいるだけだから心配ご無用!」

 

しかし、オラが説明し終わるや否や、兄貴が妙なことを言い始めた。

 

「測るだけ測ってもらおうや」

「え?」

呆気にとられるオラをよそに、兄貴は甥っ子を「測るヤツ」に立たせた。

 

WHY?なにやってんの?お兄様……。

 

すると、

「OKです!では列をお進みください」と係員。

「良かったな。パパ達と一緒に乗れるぞ!」と兄貴。

 

オイオイ、ちょっと待ってくれよ。話が違うじゃないか!

オラはあわてて甥っ子の説得工作を始める。

「オラと一緒に待っていようよぉ。怖い乗り物だよ。怖いの嫌いでしょ?」

 

すると甥っ子、

「僕、ぜんぜん怖くないよ、強いからね。マジーロッ!」

 

マジーロって何よ?

こりゃダメだと思って逃げようとしたオラは、兄貴の怪力によってむんずと列に引き戻され、

ついにサディスティックなマウンテンを登山することとなった……。

 

 

 

その後のことは、もうほとんど覚えていない。

 

「もし生きて帰れたら、二度とこんなところには来ない」

 

オラは恐怖から解放されるまでずっと、そう心に誓っていた。

見事生還した今となっても、あんなモノに二度と乗る気はないし、当然他のジェットコースター的なモノに乗る気もない。

恋女房や兄貴一家は、オラの回心を期待していたようであったが、残念ながらそれは無理だった……。

 

 

「それじゃあ乗り物じゃないアトラクションへ」ということで、オラは兄貴一家に連れられてまた列に並ばされた。
「本当に乗り物じゃないですよね?」

 

すると姪っ子が 恐ろしいことを言った。

 

 

「大丈夫だよ。ここはミッキーの家だから」

 

……ミッキーの家? ?

 

聞けば、この建物の中にはオラの宿敵ミッキーマウスがいて、訪問客と対面するのだそうだ。

それってどういうこと???

 

オラの脳裏には、ふと、ゴッドファーザーのワンシーンが浮かんだ。

 

陳情に訪れる人々をひざまずかせ、その頭を撫でつけ、自らの手にキスを求めるドン・コルレオーネ。

ミッキーマウスはそれほどまでに強大な力を手に入れたというのか?

 

 

しかも、驚くべきことにその待ち時間たるや何と70分!!!!

あの大嫌いなネズ公に頭を下げるため、70分も待つのか????

あまりといえばあまりの屈辱……。

その70分の間に、オラの頭の中では、恋女房との破局のシナリオが展開される。

オラとミッキーが一悶着起こせば、姪と甥は当然、兄貴夫婦のオラへの評価はガタ落ちするに決まっている。

だからといって、オラが20年の怨念を捨て去って、ミッキーに平伏することなど出来るはずがない!

 

許せよ恋女房……。

これは男と男、人間と鼠の意地とプライドをかけた戦いなのだ。

決して我が身が燃え尽きようとも、少年時代のオラを傷つけたあの鼠に、頭を下げることなど出来ぬのだ!

 

そんなことを考えているうちに、

オラたちは薄暗い家の中を巡り、やがて時が迫る……。

 

さあ、あの扉の向こうに奴がいる!

 

 

オラとミッキーの3度目の対決……ついに、その、扉が開いた!

 

 

暗い部屋の高場所に鎮座していると思われたミッキーは、意外なことにドアまでオラを迎えに来ていた。

しかも、部屋は明るい。

姪と甥の頭を撫でると、すぐにオラのところに来て、実ににこやかに肩を組んできた。

 

 

ミッキーは知っていたのか?オラが来ることを……。

 

 

オラは呆気にとられていた。

オラに対し、これほど気さくな態度を見せるとは、全く想像していなかった。

 

オラはすっかりミッキーのペースに乗せられ、彼に促され、記念写真を撮った。

 

 

家族6人とミッキー。前にしゃがみ込んだオラの肩にミッキーがそっと手を添える……。

 

 

暖かくて柔らかい、ミッキーの白い手……。

それは20年前……オラが欲しかったぬくもり……。

 

オラはじんわり涙がこみ上げてきた……。

 

 

写真撮影が終わると、ミッキーはオラに握手を求めてきた。

オラは20年分の思い……恨みと憧れと憎しみと感謝と……もう何だか分からない感情の全てを込めて、力一杯ミッキーの手を握った。

 

「ミッキー……」

 

 

オラを見つめ返したミッキーは、

やっぱり優しく笑っていた。

 

(完)

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あれから7年、

ただのアルバイト青年だったオラは、

数年後に自主制作映画「つるしびな」を作り、

その後、演劇作品を何本か作り、

今は仲間たちから「監督」と呼んでもらえる立場となった。

 

また、日記に恋女房と書いていたその女性と正式に結婚をし、

やがて二人の息子が生まれ、

そして6月には、第三子が生まれる。

 

しかしこの7年、オラはディズニーランドに行っていない。

オラの知る限り、嫁さんも息子も行っていない。

 

でも何となく、、、、何となくだが、

きっとまたオラは、あの場所に行くような気がする。

 

生まれて初めて、

オラ自身が、

「行きたい!」

「ミッキーに会いたい!」

と望んだ日に。。。。

2件のコメント

  • By カリン, 2013年4月19日 @ 8:25 PM

    なんだか…監督の作品そのままのような 最後に希望の観えるストーリーでしたぁ〜(ノ▽≦)゚。

  • By yamato, 2013年4月22日 @ 8:58 AM

    カリンさん 
    コメントありがとうございます。おそらく、こういう出来事のひとつひとつが大和作品の素になっているんだと思います。最後までお読みいただきありがとうございました!!

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