世界的有名鼠との対決①
東京ディズニーランドが開園30周年だそうです。
オラにとってあの場所は、とても忘れがたい思い出がありまして。。。
それも、とてもツライ思い出が。。。
これについては昔、
2006年4月10日に、当時友人だけに限定公開という形で記した日記があります。
開園30周年に際しまして、オラとディズニーとの関係修復の一歩として、
本日から3回に分けて、当時の日記を引用掲載いたします。
(以下、大和優雅 2006年4月10日の日記)
世界的有名鼠との対決①(全3回)
訳あってしばらく日記をやめていたが、訳あって再開することとなった。大した訳でもないが……。
再開一発目なので、オラの大事な歴史を書いておく。しかし、とても今日一日では書ききれないので、何日かに分けて書く。
始めに断っておく。ファンタジーボーイやメルヘンガールは読まない方がいい。読んでしまったら、忘れた方がいい……。
オラはDLが大嫌いだ。DLとは、子供達が大好きなアレ、「薄汚いネズミの園」のことである。
当然のことだが、昔はオラも子供だった。
子供の頃は、オラもあのMM(マイキーモウスとかいう鼠)が大好きだったのだ。 かわいさ余って憎さ百倍……。
小学校4年の時、オラはDLツアーに参加した。本当は近所のお兄ちゃんが行くはずだったツアーだが、その兄ちゃんは前日に熱を出し、急遽オラが行くことになった。
だから、知り合いもいない一人ぼっちの参加。
その日オラは生まれて初めて新幹線に乗り、生まれて初めて関東に行き、つまり生まれて初めてDLに行った。
朝早く出発し、DLに入場したのは10時過ぎだったか。
とにかく訳も分からぬまま彷徨い歩き、面白そうなアトラクションの列に並んだ。
それは「カイレーツオブパビリアン」とかいう海賊モノであった。
小4のオラにはワクワクドキドキの素晴らしい冒険だった。
感動したオラは、その後続けて3回、このアトラクションを楽しんだ。
「さて、次はどこ行こうか」
チケットの束を眺めながら(今はもうチケットってないみたいね)、宇宙船みたいなヤツがぐるぐるまわるところへ並んだ。
何分ぐらい並んだだろうか。オラは一人ぼっちだったので、この待ち時間がとても長かったことを記憶している。
時折首を上に向け、頭上を回る着陸するときのスペースシャトルみたいなヤツを眺めては、早く乗りたいなあと体を揺すったものだ。
そして……やっとオラの順番が来て、チケットを渡そうと思ったとき……
チケットはおろか財布丸ごとスラれていることに気づいた……。
「ボク?チケットは?」
オラはショックのあまり何も答えられず、泣き出してしまった……。
その後、係の人にどっかに連れて行かれ、事情を聞いてもらい、「遺失物なんとか書」に住所と名前を書かされた。
係の姉ちゃんは「お財布が見つかったら放送するから、それまで遊んでて」と言った。
が、金もなくチケットもないオラに何をして遊べと言うのか。
仕方がなく、オラは下を向いて財布を捜しながら歩き始めた。
昼はとっくに過ぎていた。
のどが渇きだし、やがて強烈な空腹感に襲われた。
「この途方もなく広いDLの中で、オラの財布なんて見つけられっこない」
その絶望的な事実に気づいたとき、またボロボロと涙がこぼれてきた。
ツアーの集合時間は17時であったが、15時前になった頃、オラはもう、他人の楽しそうな顔に囲まれていることが耐えられなくなった。
少なくともここから出れば、何に乗ろうか迷っている顔や、DLでしか見たことのないヘンテコな食べ物を見ないで済む。
オラはDLの檻から出て、駐車場でツアーの人を待つことにした。
それはおそらく、オラの人生の中で、一番長く感じた時間ではないだろうか。
喜びと幻想の直近で、実に受け入れがたい絶望の中にいる自分……。
オラは1時間以上、こぼれ出す涙をぬぐい続けていた。
やがてあたりが薄暗くなり、帰宅客が増え始めた頃、出入り口付近に、あの世界一のスーパースター、このDLの主、マイキーモウスとかいう鼠が現れて、帰宅客と握手したり写真を撮ったりし始めた。
オラの数十メートル先に、あのミッキー……じゃなくてマイキーがいる。
それは砂漠に見るオアシス、地獄に見る蜘蛛の糸、戦場に見るモンロー……。
オラは入場口に向かって走った。
「こんな最悪な一日。せめてマイキーと握手の思い出を!」
がしかし……
DLを出るときにすっかり拗ねていたオラは、再入場可能なスタンプというものを押さなかったらしく、糞ったれ係員が中に入れてくれない。
それでもオラは、DLのささやかな思い出を手に入れるべく、鉄柵ギリギリに身を乗り出して叫んだ。
「ミッキー!ミッキー!(もう面倒だ。彼の本名を言わせてもらう)オラと握手してよミッキー!」
思い出すと今でも胸が痛む。
幼きオラの、その恥も外聞もなくファンタジーを求める姿……、周りにはどれだけ奇異に映ったことか。
「ミッキー!ミッキー!オラと握手してよーー!オラ、財布なくしちゃって、チケットもなくしちゃって、全然遊べなかったんだ。ごはんも食べてないんだ。ミッキー!お願いだよー。こっち来てオラと握手してよーーー!」
オラは、その後の光景を一生忘れないだろう。
あの時、ミッキーはオラの方をはっきりと向いた。
世界一のスーパースター、ミッキーマウスは、その日ディズニーランドで最も惨めな思いをした子供の叫びを耳にし、しっかりとその顔を見た。
そのオラの顔を見た上で、あからさまにオラから顔を背け、オラから遠いほう遠いほうへと離れていった……。
「ミッキー……どうして?……」
もう、涙も出なかった……。
やがて集合時間になった。
オラはツアーコンダクターのおじさんに買ってもらった弁当とジュースにむさぼりついた。
夜遅く、近所の駅まで迎えに来た父親の顔を見るなり、オラはまた泣いた。
「お財布なくしてごめんなさい」
それだけ言うのが精一杯だった。
父はオラを責めることなく、何も訊かなかった。
オラの中に、一種の恨みとも言えるミッキーへの感情が芽生えた日。
その後オラは、小学4年にして、ファンタジーやメルヘンを全く受け付けない、およそ子供らしくない子供へとひねくれていく……。
オラがミッキーと再会するのは、この日から約10年後のことである……。
(つづく)